応用行動分析って聞くけど、ABA?ABC?よく分からない…、ABC分析って、実際にはどうやればいいのか分からない…そういったお悩みを抱えた保護者、支援者の方、いらっしゃいますでしょうか?今回の記事では、応用行動分析(ABA)の中のABC分析について、以前より詳しく説明させていただいています。この記事を読めば、
- 応用行動分析(ABA)、ABC分析とは何か、が分かる
- 実際の活用方法が分かる
かと思います。
今回参考にしたのはこの本です。
応用行動分析(ABA)とは?
応用行動分析(ABA=Applied Behavior Analysisの略)とは、人間の行動を科学的、法則的に研究した学問のことです。この学問の中の行動観察法、ABC分析というのが問題行動の対応にあたってとても効果があり、かなり以前から、私の知る限り数十年以上前から教育現場で注目されています。
ABC分析とは?
実はこれについて、以前の記事でも触れています。
今回、改めてできるがけ詳しく説明したいと思います。ABC分析とは、人の行動をA(原因)、B(行動)、C(結果)に分けて記録、分析することで、次回のB(行動)をコントロールするという考え方です。つまり
A(原因)がある
↓
A(原因)のせいでB(行動)が起こる
↓
B(行動)をしたことでC(結果)が得られる
↓
C(結果)が得られたことでB(行動)を繰り返す
もしくは
C(結果)が得られたことでB(行動)をやめる
という考え方のもとで、記録した回以降のBをコントロールしていこう、というものです。
行動の強化、弱化
ここで、B(行動)を繰り返す、強めることを、行動の強化、B(行動)をやめる、弱めることを、行動の弱化と言います。
不適応行動の分類
B(行動)について、分析したいと思う時には何らかの問題行動があるわけです。その問題行動(不適応行動)には4つの原因があると言われています。
- 回避行動(何かを避けたい、でもできない)
- 要求行動(何かが欲しい、でももらえない)
- 注意喚起行動(見てほしい、でも見てもらえない)
- 自己刺激行動(感覚欲求が強い、我慢できない)
過去に行ったABC分析の実例
挨拶をしないAくん
Aくんはダウン症児で、理解力はある程度あり、言語でのコミュニケーションに困ることはありません。ですが、挨拶だけはしない、というお子さんでした。そこでアセスメントをし、挨拶についてのABC分析を行ったところ、
以下の内容に分析ができました。
A(原因) 本人が人の気を引くのが好き
B(行動) 挨拶をしない
C(結果) 注意されることで注目を集める、気持ちいい
→Bが強化される
そこでとった対応は以下です。
- 教室の入り口に足跡マークを貼って立ち止まる場所を図示する。
- 挨拶することを入り口に文章で書いておく。
- 挨拶ができた時は大袈裟に褒める。
- 挨拶ができなかった時は他の子の例を見せ、出来た子は大袈裟に褒める。
B(行動)に注目しない→Bの弱化を図る
適切な別のB’が出来た→B’の強化を図るために大袈裟に褒める
結果、人に注目され、褒められるため、別のB’(別の行動)、挨拶をする、が強化され、できるようになりました。
授業開始の合図をすると大きな声で泣き出すBさん
言葉を聞いて理解することはある程度できている様子のASDのBさん、授業開始の合図をすると大声で泣き出すという特異な行動があり、発語は難しいため、その原因も分からず、対処に苦慮していました。そこで、この行動をABC分析しました。4つの不適応行動のどれなのかを把握するのが難しく、アセスメントにはかなりの時間を要しましたが、以下のように分析できました。
A(原因) 挨拶をするときに大声を出したい、というこだわり行動
B (行動) 挨拶を聞いたら大声を出す
C(結果) 欲求が満たされてスッキリする
→Bが強化される
※挨拶が怖い、ということも考えましたが、挨拶をしないと挨拶を要求し、挨拶をしたところで泣き叫ぶ、という行動をしたため、こだわり行動である、と判断しました。
そこでとった対応は以下です。
- 授業の挨拶はしない、と事前に周囲に前置きし、授業の挨拶(号令)を省く。
- 挨拶の要求には応じない。
A(原因)を取り除く→B(行動)の弱化を図る
結果、A(原因)がなくなったため、B(行動)も見られなくなりました。
4つの不適応行動に対する基本的な対応
これらについてはこちらの記事で解説しています。
ですのでここでは簡単に述べたいと思います。
回避行動への対処
回避行動への対処方法は主に2つ
- A(原因)を取り除く
- B’(別の行動)を教える
です。
(例)
大音量が苦手で、それをかき消すために大声で叫ぶ子の場合
1 A(大音量)がしそうな場面を避ける、イヤーマフをする
2 B’(先生に助けてを求める)を教える
要求行動への対処
要求行動への対処は主に2つ
- A(原因)へアプローチする
- C(結果)にアプローチする
(例)
帰る間際に「もっと遊びたい」と泣き叫ぶ子の場合
1 A(帰る時間を事前に伝え、見通しをもたせる)→C(できたら褒める)
2 C(「夕飯は好きなご飯だよ」などと別の刺激を与える)
注意喚起行動への対処
注意喚起行動への対処は多岐に渡り、
A(原因)、B(行動)、C(結果)すべてへのアプローチを考える必要があります。
(例)
授業中にかまって欲しいので手をあげまくり、指名されないとストレスで叫ぶ子の場合
1 A(順番制にして)を取り除く
2 B’(正しい注目の集め方)を教える
3 C(叫ばれたら無視、適切な行動なら褒める)でコントロールする
自己刺激行動への対処
この対応が個人的には最も難しいと感じています。これの対処方法は、A(原因)、B(行動)へのアプローチ、です。
(例)
刺激が欲しいので、目の前に机があると登って飛び降りる子の場合
1 A(机など遊んで不適切なもの)を取り除いて、滑り台など安全な刺激が入る場所を用意する
2 B(いきなり飛ぶ)ではなくB’(遊びたいと意思表示する)という適切な行動を教える
応用行動分析(ABA)で最も大事なのは事前のアセスメント
応用行動分析をするのにあたり、ABC分析に目がいきがちですが、一番大事で大変なのが、事前のアセスメントです。これが出来ていないと、そもそもABCに分類出来ないあるいはどの不適応行動か分類出来ません。最悪の場合、不適応行動の分類を誤り、間違った刺激を与えて問題行動を強化しかねません。ですので、事前のアセスメントをじっくり行い、正しく分析することが必要になります。
応用行動分析の、教育現場における現実
応用行動分析はかなり歴史のある分析です。にも関わらず、実は、教育現場でそれほど活用されていません。断言するのは極論かもしれません。しかし、私はいくつかの県を跨いで教員をしていましたが、ABAを行っていたところはほとんどありませんでした。割とやっているところでも、熱心な先生はきちんと行っている、という程度で、ひどい県では、そもそも先生方の多くがABAを知らないという状態でした。なぜこういったことが起こるのか、それは
- アセスメントに割く時間を捻出できる先生がほとんどいない
- ABAをしっかり勉強しても、より一層仕事を与えられるだけで給与は上がらない
こういった現状があるからでしょう。生徒のためになる、というメリットのために頑張ってくれる先生ももちろんいます。ですが、それだけでは難しい、と判断する方の方が多いというのが現状かと感じています。
まとめ
- 応用行動分析のことをABAといい、その中の分析方法にABC分析がある。
- ABC分析を使うと、問題行動を弱化したり、コントロールできる可能性が上がる。
- 問題行動を4つに分類すると、その対応もマニュアル的に分かりやすい。
- ABAはいまだに教育現場で普及していない可能性が高い。
私自身、ABAの資格取得を検討していますが、その資格の利用方法が少なく、資格取得を悩んでいます。特別支援教育や、その他の教育現場においてもとても利用価値のある分析であることは確かです。ですので、ABAを利用しやすいような環境づくりがされれば、と切に願います。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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