身内が発達障害っぽい、もしくは発達障害と診断されたがどう関わっていいか分からない…
そんなふうにお困りの方はいらっしゃいませんか?
私の家庭もそうでした。
「じゃあどうしたらいいの!?」
よく妻に言われたものです。
発達障害者に対し、家族はどう対応したら良いのか
これについて今回はお話ししたいと思います。
今回の記事を読めば
- 発達障害の治療の流れを理解する
- 家族がどう関わっていけば良いかがわかる
といったメリットがあります。
今回参考にしたのはこちらの本です。
大人の発達障害とは
これについてはこの2つの記事で話させていただきました。
ざっくり言うと
- 発達障害にはASD、ADHD、LDがある。
- 特にASD、ADHDが社会に出て問題になりやすい。
- 大人の発達障害においては、周りから求められるものが多いため、問題も多様化しがち。
といったところです。
発達障害の原因とは
脳の機能、特性が原因
発達障害の原因については
まだ解明されていません。
ですが、脳のいくつかの部分の働きに障害があるため、
発達障害の症状が引き起こされているのでは、と考えられています。
重要な点は
親の育て方が原因ではない
ということです。
大人の発達障害について、相談をするには
では、大人の発達障害が疑われる場合にどこに相談をすれば良いでしょうか。
以下の対応が考えられます。
「精神科」や「心療内科」を受診する
大人の発達障害と子どもの発達障害で相談先が異なります。
大人の場合は、病院の「精神科」、「心療内科」を受診します。
一つ注意点として、
発達障害については診断が難しく、経験のある医師も限られている
という点です。
下調べをし、信頼のおける医療機関を選べると良いかと思います。
診断の流れ
初診では、医師からの問診により以下のようなことが聞き取られます。
- 生育歴
- 家族環境、家族歴
- 抱えている悩みや心身の症状
- 性格や人との関係性
- これまでの仕事の状況や環境
- 使用している薬やこれまでの受診歴
などです。
医師は、これらの情報や本人の話し方や表情なども参考にし、
総合的に判断をしていきます。
また、さまざまな心理検査、知能検査も行われます。
家族も付き添えると良い
発達障害の診断では、生まれた時の状況や、生育過程の情報が重要になります。
しかし、発達障害のある本人は
自らの心身の状態を客観的に説明するのが苦手であることがあります。
そのため、子どもの頃の様子や家庭環境をよく覚えている家族が、
受診に付き添ってもらえると診断がスムーズになります。
また、発達障害以外にうつ病などの二次的な心の病気を発症しているケースもあります。
そういった場合には周囲のサポートが重要になるため、
その方法を知ってもらうためにも家族の付き添いが望ましいと考えられます。
診断時に行われる知能検査(WAIS)とは
知能検査についてはこちらの記事でも言及しました。
ここでは子どもを対象に行われる「WISC」について言及しましたが、
大人の発達障害ではその大人(16歳以上)バージョンの
WAISという検査を行います。
基本的には受ける側からすると、大きな違いはありません。
これにより、本人の能力の特性や、それによる困り感について確認します。
自治体などに相談する
発達障害の相談先や受診先が分からなかったり、
近くに適切な医療機関が見つからなかったりする場合には、
地域の自治体や保健所、精神保健福祉センターなどに問い合わせましょう。
発達相談支援センターに相談する、という方法もあります。
発達障害者支援センターとは
発達障害のある人やその家族の
生活上の問題や悩みを解決するために助言や支援をしてくれる専門的機関
です。
医療機関を紹介してくれるほか、活用できるサービスなどについて教えてくれます。
大人の発達障害で起こりやすい「二次障害」
発達障害がベースにあることにより、二次的に発生する別の健康上の問題を
二次障害と言います。
大人の発達障害では、ほとんどのケースでこの二次障害が起こると考えられています。
(例)うつ病、引きこもり、睡眠障害、社交不安症、パニック障害、依存症など
逆に、二次障害が発達障害より先に明らかになり、
そこから医療機関を受診した結果、発達障害が分かる、というケースもあります。
そしてさらに、二次障害によって発達障害が隠されてしまう、というケースもあります。
症状の表面だけをとらえていると、二次障害と発達障害は見分けがつきにくいのです。
そういったことからも、勝手に判断をせずに医療機関を受診すること、
受診する際には下調べをして信頼できる医療機関を選ぶことが重要になってきます。
発達障害との向き合い方
発達障害、といきなり言われてもなかなか受け入れられないこともあります。
ですが、診断されることにより、
苦手なことへの対応方法や自分の知らなかった得意なこと
が分かることもあります。
また、これまでの生活の中で発達障害の特性から
ばくぜんとした不安を抱えてきた方の、その不安が解消される、ということもあります。
自身の生きにくさを解消するとともに、自信をもって人生を歩んでいくために
発達障害について診断を受け、それを受け入れることはとても有意義なことと言えます。
一方、注意点としては
診断名にとらわれすぎない
ということがあります。
ASDやADHDといっても、その現れ方は人それぞれです
診断名より、その診断で判明した自身の個性、特性に着目する方が良いでしょう。
発達障害の治療法、対応法
発達障害については、完治する、ということは現在のところありません。
ですが、さまざまな治療法を用いて、その特性で起こる困り感を解決することができます。
環境調整法
発達障害の特性に合わせ、さまざまなツールを活用したり、周囲の協力や配慮を得たりしながら
生活や活動がしやすいように環境を整えていく方法です。
これの実践例がこちらの記事です。
これも参考にしていただけたら、と思います。
認知行動療法
社会マナーに反した行動や人を不快にしてしまう行動に対して、
認知の歪みを修正することで、場にふさわしい行動をとることができるようにしていく
という治療法です。
この治療法の一つである認知再構成法について、
この記事の中で実践例を説明していますので、それも参考にしていただけたらと思います。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
社会生活で必要な
- コミュニケーション能力
- 対人適応能力
- 作業を遂行する能力
を、どのような場面でもできるように訓練していくトレーニング方法です。
薬物療法
治療薬によって一時的に症状をコントロールしたり、
二次的に生じている症状や障害の治療を行う治療法です。
特にADHDの症状をコントロールするのに有効です。
(例)コンサータ、ストラテラなど
日記療法
カウンセリングで行う心理療法の一つです。
病院で治療を受けるのにあたり、診療時間というのはごく短時間に限られてしまいます。
そんな中で医師が本人の全ての状況を把握することは難しく、
信頼関係を築くことも簡単ではありません。
そこで、本人に普段から日記をつけてもらい、
それを活用して診療を行う、という方法があります。
それが日記療法です。
- 本人が1日の体験を日記に書く
- できるだけ毎日書く
- 文章量は数行で良いので、良かったことも悪かったことも書く
- 日記を元に医師等によるカウンセリングを受け、アドバイスをもらう
- 対応策を実行する
- 問題や悩みを受け入れたり、改善できるようになる
家族療法
治療に家族も一緒に参加する治療方法です。
家族が協力的な場合、一緒に治療に取り組んで、家庭ての接し方を変えてもらうのも有効です。
少しずつ意見を調整して歩み寄ることで、家庭でのさまざまな問題の解決を図ります。
また、両親や兄妹など、家族にも発達障害があったりその傾向がある、
というのはよくあることです。
そういったケースの対応にも効果があります。
二次障害への対応
大人の発達障害は、症状が目立つようになってから受診までで時間が経過していることが多いため、
うつ病や不安障害といった二次障害を起こしていることが多いです。
ですので、発達障害の治療と並行して、二次障害への治療も行うことになります。
二次障害の治療は薬物療法がメインです。
(例)抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、抗てんかん薬、睡眠薬など
発達障害と間違われやすい心の病気
発達障害の人に起こりやすく、なおかつ発達障害の症状と似ている病気というのがあります。
こういった病気が発症すると、今困っている症状が
その病気のせいなのか、実は発達障害の特性の影響が出ているのか、
という判断がつきにくくなります。
医療機関を受診し、治療を継続しても生活の難しさが変わらない…
そんな時はこういった病気の影に発達障害が隠れている可能性があります。
- 強迫性障害
- 特定の考えにとらわれ、それを打ち消す行動がやめられない。
- 汚れている気がして手を洗い続ける…、など。
- ASDに似ている。
- PTSD
- トラウマが起こすストレス障害。
- 常に不安や緊張が続く。
- ADHDに起きやすく、ASDに症状が似ている。
- 双極性障害(躁うつ病)
- うつ状態と躁状態を繰り返す病気。
- 止まることなく話し続ける、突然関心や興味がなくなる…など。
- ADHDに似ている。
- パーソナリティ障害
- 性格が極端に偏っている病気。
- 気分の波が激しく、不安定。
- 人を操ろうとして嘘や悪口を言う。
- 発達障害の二次障害に似ている。
- 統合失調症
- 複雑な精神症状や意識の障害が起きる。
- 幻聴や幻覚に悩まされたり、考えや言動がめちゃくちゃになる。
- ASDに似ている。
親が子にできる支援
これについては以下の記事で詳しくお伝えしています。
- アタッチメント(愛着)の形成を心がける
- 具体的な言葉かけ等、特性を意識した接し方をする
などをお話ししています。
こちらにあるように、親ができることはたくさんありますが、
逆に負担にもなりかねません。
ぜひ、負担を抱え込まず、積極的に行政サービス等を使いながら
複数で支援をしていく体制を作りましょう。
発達障害者の家族に起こりやすい「症状」
発達障害は家族による支援が重要となりますが、
一方で発達障害の特性の影響で、家族関係がうまくいかなくなる、ということも多いです。
カサンドラ症候群とは
これは正式な病名ではありません。ですが、広く知られている症状です。
発達障害(特にASD)のパートナーとの意思疎通が難しく、
その結果として大きな不安を抱え、ストレスから心身に不調をきたしてしまう、
というものです。
発達障害の人が利用できる支援機関
発達障害の治療はとても大変で、期間も長期にわたります。
家族だけで抱え込まず、できるだけたくさんの機関に関わってもらい、
負担を分かち合いましょう。
- 発達障害者支援センター
- 発達障害のある人の生活全般について相談や支援をしてくれる
- 他の就労支援機関等の連携や紹介をしてくれる
- 障害者職業センター
- 就労相談や作業訓練、対人訓練、就職先の紹介やジョブコーチの派遣をしてくれる
- 地域若者サポートステーション
- 15〜39歳までの引きこもり、不登校の若者が対象
- 企業での就労体験やコミュニケーション訓練をしてくれる
- ハローワーク
- 「専門援助部門」で相談を受け付け、就労を支援してくれる
ハローワークの役割についてはこちらの記事で詳しくお伝えしています。
まとめ
- 発達障害の対応としては、医療機関への相談が重要。
- 家族も含めて医療と連携すると効果が大きい。
- 負担を抱えてしまうと別の問題が発生することもある。多くの機関、サービスを使おう。
ぜひ、発達障害の方、それを見守る家族の方が健やかに過ごせるよう、
その参考になればと思います。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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