発達障害の特性が影響して学校に行きづらい、家族が行けていない
そういった悩みを抱えている方、いらっしゃいますよね?
発達障害の特性は、学校という集団生活に多いに影響を与えるため
その結果不登校になる、ということも少なくありません。
そこで今回は、
- 不登校という「二次障害」への考え方
- 不登校への具体的な対応の仕方
についてお話ししたいと思います。
今回参考にしたのはこの本です。
発達障害の二次障害とは?
発達障害の二次障害についてはこちらの記事でもお話ししています。
子どもの発達障害で起きやすい二次障害についてお話しすると、
主な症状は
精神症状の発症、不適切な行動の学習、不登校、引きこもり
といった症状が考えられます。
子どもの二次障害への対応方法
子どもの二次障害の場合、主に、
学校と家庭を軸として、医療や福祉とどう連携しながら支援を展開するのか
が大事になってきます。
また、支援においては、2つの種類の環境について考えることが必要になります。
構造的環境と人的環境
2つの種類の環境とは
- 構造的環境
- 人的環境
です。
構造的環境…学校でいう、物理的な教室環境、ルールや制度のこと
人的環境 …その子の実態を周囲の人がどれだけ理解しているか
4つの支援ステップ
子どもの二次障害への支援は以下の4ステップになります。
- アセスメント
- 子どもの性格、趣味嗜好、発達特性を行動観察や心理検査等で把握する
- 構造的環境の調整
- 教室の配置、感覚刺激への配慮、サポート道具の使用等、物理的な環境を変える
- 人的環境の調整
- 家族、親族、学校の先生、クラスメイト等の周囲の人の理解をすすめる
- 本人への支援
- 適切や行動の獲得、誤学習した行動の教え直し
1〜4の順番に行うのが理想的ですが、
緊急の場合ではこの4つのステップを同時、複合的に進めていく場合もあります。
二次障害の2段階支援
二次障害は、周囲の不適切な関わりで発生することが多いです。
それについて、能動的要因、不作為要因の2つの視点をもって支援をする必要があります。
能動的要因
不適切な関わりのことを言います。
(例)しかる、起こる、いじめ、体罰、虐待、過剰な期待、能力と不一致の課題設定
これらには
- 気づかれやすい
- 対策が入りやすい
という特徴があります。
不作為要因
適切な支援の不足のことを言います。
(例)褒めない、認めない、信頼しない、必要な課題を与えない、役割を与えない
これらには
- 気づかれにくい
- 対策が遅れやすい
という特徴があります。
二次障害のアセスメントとは?
発達障害の二次障害でのアセスメントについて、
まず大前提として、これは大きな課題なのですが
決まった方式がありません。
ですので、その都度一人一人に合った支援を考えるためのアセスメントが必要となります。
2つのアセスメント
アセスメントの仕方として考えられるのが、まず以下の2種類のアセスメントです。
フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントです。
これらのアセスメントに優劣はなく、双方長所、短所があります。
これら二つを組み合わせて行うアセスメントを
包括的アセスメントと言います。
フォーマルアセスメントとは?
標準化された検査ツールを使った分析です。
知的発達段階を調べる知能検査(WISCなど)や、
発達段階を図る発達検査があります。
インフォーマルアセスメントとは?
学校、家庭での学習の様子を記録する「行動観察」や
行動とその前後を合わせた「原因ー行動ー結果」の3つを記録して分析する
ABA(応用行動分析)というものがあります。
ABA(応用行動分析)とは?
発達障害者支援の中でも特に広く知られ、世界中で活用されている支援方法です。
私も仕事でよく使っていました。
これは、人間の行動を「ABC分析」という方法で観察するものです。
A(原因)→B(行動)→C(結果)
原因があり行動が起きる。その行動で得た結果によってまた次の行動が決まる。
こういった連続して起こるABCを記録することで行動の分析をするのが
ABC分析です。
また、C(結果)によってB(行動)が増えることを強化、
B(行動)が減ることを弱化と言います。
(例)強化:C(ご飯が美味しかった)→B(もっと食べる)
弱化:C(ご飯が美味しくなかった)→B(ご飯を食べなくなる)
ですので、分析の結果次第で、
CをコントロールすることでBを増やしたり減らしたりできる
というわけです。
分析をするのにあたり知っておきたいことの一つとして、
B(行動)が不適切行動(この場合は「状況に適応できていない」という意味)の場合、
Bには4つの種類があるということです。
回避行動とその対処方法
何かを回避したいためにとる行動のことです。
(例)A(授業がわからない)→B(教室を飛び出す)
こういった行動への対処方法は主に2つです。
- 原因を取り除く
- 適切な別の行動を教える
(例)の場合で言うと、
- 内容の分かる授業を行う
- 授業がわからなくて困ったら先生に伝えるようにする
といったかたちになります。
要求行動とその対処方法
何かを要求するためにとる行動のことです。
(例)A(おもちゃが欲しい)→B(泣き叫ぶ)
対処方法としては2つです。
- A(原因)へアプローチする
- C(結果)へアプローチする
(例)の場合で言うと、
- おもちゃが買えないことを先に伝えておく→ガマンできたらほめる
- 「今日のご飯はカレーだよ」などと気のまぎれる別の結果を示す
- (これはあまり良くないが)要求を認めず、無視をする
注意喚起行動
いわゆる「かまってほしい」という気持ちからくる行動です。
(例)授業中にあててもらえないと泣き叫ぶ
これに関してはA(原因)、B(行動)、C(結果)の全てにアプローチが必要です。
まず、注意喚起行動についてはアタッチメント(愛着)の問題が
背景にあることもあります。アタッチメントの形成について
必要に応じて支援していくこともアプローチの一つとして考えられます。
アタッチメント(愛着)についてはこちらの記事でお話ししています。
その他、(例)の場合は次のような対応が考えられます。
- こちらが指名するのではなく、順番にあてていく、というかたちにする
- 適切に注目をされる代替行動を伝える
- 泣き叫ぶという行動には刺激を与えず、良い行動のみ、ほめるなどして強く反応する
自己刺激行動
無意識に感覚刺激を求める行動を自己刺激行動と言います。
(例)意味なく走り出す
経験上、なかなか対策が難しいですが、
自己刺激行動への対策としては、A(原因)へのアプローチが考えられます。
- 走り出しても問題ないよう、広い空間を用意する
といったかたちです。
また、年齢が上がるにつれ、自分で感覚刺激の欲求を理解しだすことが多いので、
「ガマンできないので、グラウンドを走ってきていいですか?」
などと、自分で行動の前に伺いを立てるといった
より良い行動に変えれるように援助してあげるのも効果的かと思われます。
不登校支援の対応について
不登校は、
本人の特性に合わない学校環境が重なって起きた二次障害
となります。
ですので、基本は
アセスメント→構造的環境調整→人的環境調整→本人への支援
という4つのステップに沿って進めていくことになります。
ですので、家庭、学校、医療、第三者機関が連携して解決にあたることが必要です。
不登校支援でのアセスメント
不登校にはさまざまな原因があります。
さらに、不登校をきっかけに病院を受診した内の
約6割がASDの診断を受け、
約2割が不安障害の診断を受けている
という指摘もあります。
発達障害の可能性も鑑みて、
フォーマルアセスメントやインフォーマルアセスメントなど、
多角的なアセスメントが必要となります。
不登校支援での構造的環境の調整
アセスメントの結果をもとに適切な環境を考えていきます。
(例)
- 大人数に耐えられない→クールダウンスペースの用意
- 騒音に耐えられない→イヤーマフの使用
- 学校のルールが理解できない→合理的配慮で例外を認めてもらう
など
不登校支援での人的環境の調整
先生との関係の調整
「令和2年度 不登校児童生徒の実態調査(文科省)」より、
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf
学校に行きづらくなったきっかけの約3割が
先生のこと
とあります。
他にも回答は多岐に渡りますが、
不登校において、先生との関係を調整する必要のあるケースが少なくない
ということが分かります。
では、どのように調整をすれば良いでしょうか。
以下のような対応が考えられます。
< ケース1 >
先生が生徒の特性を理解していない場合
→先生と保護者で面談。特性を伝えて配慮を依頼。
※合理的配慮の否定は障害者の差別にあたるのでしっかり主張してOK。
< ケース2 >
先生に配慮を拒否された場合
→管理職(校長、副校長)に連絡。先生、保護者、管理職で面談。
< ケース3 >
学校全体で配慮を拒否された場合
→教育委員会、医療機関との連携をする。外部の支援機関の利用も検討。
友達との関係の調整
先ほど紹介した調査において、
「友達のこと」が不登校のきっかけになったケースも3割弱あります。
ですので、友達との人間関係について注意することが必要になります。
また、発達障害の子どもがいじめられる確率は、定型発達の子に比べて
有意に高くなっている、という調査結果もあります。
発達障害の子どもの不登校については、より一層
いじめの有無やその対応が必要となります。
いじめが考えられるケースでの環境の調整には、以下のようなことが考えられます。
- 座席の調整
- 加害側、被害側の監視体制の強化
- 加害側の出席停止措置の検討
- いじめアンケートの実施
- 学級編成の配慮
- 授業、学級経営の研修を実施
など
不登校の、本人への支援
不登校は、自分に合わない環境から距離をとった結果なので、
誤学習ではなく、心と体を守る適応行動です。
それを踏まえた支援が必要となります。
不登校には
「前駆期、混乱期、休養期、回復期、助走期、復帰期」
という段階が考えられます。それを踏まえて支援を考えていきましょう。
前駆期
登校の行きしぶりや心身の不調が現れる期間です。
この期間では、子ども自身の悩みを察知することが重要です。
また、この前段階では少しの後押しで問題を乗り越えられる子も多いです。
保護者の方から少し登校をうながしても、問題はありません。
混乱期
ある日突然部屋にこもる、登校できなくなる
この不登校直後の状態が混乱期です。
この期間は子どものエネルギーがなくなり、心身ともに厳しい状態が予想されます。
子どもの「登校したくない」を受け入れて、一定期間の休養をうながす対応が必要となります。
休養期
混乱期の期間は人によって変わりますが、
家族が受け入れて関われば、徐々に気持ちが落ち着いてきます。
この回復期間を休養期と呼びます。
この期間は、ストレスを減らし、何気ない会話を繰り返すなどして、
心のエネルギーを貯めることが大切になります。
ただし、この期間では生活習慣の乱れに注意が必要となります。
ある程度維持されているなら問題ないので、
度の過ぎた生活習慣の乱れに注意しながら、寛容な心で見守っていきましょう。
回復期
休養期を経て、だんだん外への意識が見られるようになっていきます。
この時期を回復期と呼びます。
この期間では、外に出ることに慣れることが、再登校までの慣らし運転になります。
できるだけ、子どもの意欲に沿って外出の経験を積んでもらいましょう。
まずは学校に関係ない場所から始めると良いです。
次第に登校への意欲も芽生えると思われます。
その場合は、午後から、などとスモールステップでの挑戦を提案しましょう。
助走期
心のエネルギーが回復してもとの状態に近ついてきた時期を
助走期と呼びます。
この時期には、再登校を目指す、あるいは別の場所に通う、という選択肢を考えることになります。
再登校をうながす場合は
- 生徒指導は行われているか
- 合理的配慮は可能か
- クラス編成を考慮して、再登校可能なクラスメイトや担任が設定されているか
といった環境調整前提で考えましょう。
また、いきなり元通りは大変なので、スモールステップを心がけましょう。
復帰期
スモールステップで学校に通えるようになってきている、
もしくは違う場所に通学できている、
こういった状態であれば、将来のビジョン、具体的な進路、就労について考えていくことになります。
これを復帰期と言います。
復帰期での進路選択においては、
子どもが夜間タイプなのか、学習困難なのか、医療との連携が必要なのか
といったことを考える必要があります。
長い目で見た学校選択や、医療との連携を考えていきましょう。
発達特性(ASD)を意識した不登校対応
ASDはそもそも特性として
社会性の意識が苦手
ということがあります。
上下関係のある、組織構造の中での役割を意識する力が弱いのです。
人類皆平等、という意識が人一倍強かったりします。
そのため、登校の言葉かけにも注意が必要です。
平等を意識する声かけが大切になり、社会人の契約のようなイメージが必要となります。
(例)
「まずは週2日、別室登校からどう?」
↓
本人「なら登校します」
まとめ
- 不登校は発達障害の二次障害であるという可能性も視野に入れて支援する。
- 二次障害の基本はまず多角的なアセスメント。それを含めた4ステップで対応する。
- 学校を含め、さまざまな機関との連携が重要。
- 不登校には子どもの内面を鑑みて幾つかの期間がある。それに応じた対応を心がける。
不登校に対する不理解は根強く、不登校=悪、としている人もいるようです。
ですが、不登校はあくまで子どもの心と体を守る適応行動である、
という認識をもち、アセスメントを適切に行い、支援をすることが
現在考えられている不登校対応への基本です。
ぜひ、今回の記事が不登校支援の助けに少しでもなれば、と思います。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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