ASD児との関わり方〜支援が困難な行動への対応

発達障害について

ASDのお子さんの保護者の方々、

子どもが言うことを聞いてくれない、他の子と行動が違って困る

そういった悩みをお抱えではないでしょうか?

私もそういった子を過去に支援していた際、よく困り感を抱えていました。

今回の記事を読めば、

  • ASDについての理解が深まる
  • 周囲と調和できない際の対応方法について具体的に理解できる

というメリットがあります。

今回参考にしたのはこの本です。



ASDとは?

ASDの特徴、診断基準についてはこちらの記事でお話ししています。

今回もう少し補足すると、以下のようなことがあります。

ASDの定義

日本においては、ASDの定義は公表されていないようです。

ですが、ASDはこれまでの自閉症や高機能自閉症をまとめた考え方だと考えられます。

ですので、ここでは文科省の報告「今後の特別支援教育の在り方について」

にある、高機能自閉症の定義を参考にしたいと思います。

今後の特別支援教育の在り方について(最終報告):文部科学省

こちらでは、高機能自閉症が以下のように定義されています。

  1. 3歳くらいまでに現れる
  2. 他人との社会的関係の形成の困難さがある
  3. 言葉の発達の遅れがある
  4. 興味や関心が狭く、特定のものにこだわる
  5. 中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される
  6. 知的発達の遅れを伴わない

自閉症と高機能自閉症の区別が6を満たすがどうかの違いなので、

上記の1〜5を満たすものが、日本における現在のASDの定義

と考えてよさそうです。

ASDに多く見られるWISCの結果について

WISCについてはこちらの記事で紹介しました。

こちらでお伝えしている通り、WISCだけでASDを決定づけることはできません。

ですが、ASDに多いWISCのパターンが存在するのも事実です。

このパターンからは、以下のことが読み解けます。

< 活かしたい強さ >

  • 視覚情報をもとに考えたり、新しい情報に基づいて課題に対応する力

< 補いたい弱さ >

  • 言葉の意味を理解し、操る力
  • 言語によって知識を習得する力
  • 聞いた情報を一時的に脳にとどめて、それを操作する力
  • 単純な視覚情報を素早く正確に処理する力

< 支援方法の例 >

  • 言葉や一般的知識の獲得にあたって個別指導の機会をつくる
  • 言語理解の弱さを視覚理解の強さで補うような配慮をする
  • 説明や指示は短く、簡潔にする
  • 図やイラストなどの視覚的手がかりを活用する
  • 指示は短く簡潔にしなくてはいけないが、繰り返す必要がある
  • 静かで穏やかな環境を確保する

ASDの支援が困難な行動とは?

ASDの支援が困難な行動はさまざまなパターンがあります。

  • こだわりが強く、その行為が周囲とうまく調和しない
  • コミュニケーションが苦手で周囲との関わりにすれ違いが起きる
  • 言語の発達が独特なので、気持ちや意図の理解が難しい場面がある

などなど…

では、こういったケースにどう対応していけば良いでしょうか。

行動が周りとうまく調和しない、こういう行動の変化をうながしたい時は

アセスメントの後、状況に応じて応用行動分析を使う

というのが良いかと思います。

アセスメントについて

アセスメントの方法についてはこちらの記事でもお話ししています。

基本的には二次障害に限らず、

子どもの実態把握を行うのにはまずアセスメントの必要があります

まずフォーマルアセスメントについて考えていきましょう。

この場合考えられるフォーマルアセスメント

まず、先ほど紹介したWISCです。

これにより、本人の持っている複数の認知能力を測り、

得意な力と苦手な力を理解することができます。

他にも、周囲に相応しい行動が難しい場合に

SーM社会生活能力検査

というものが行われることもあります。参考になさってください。

フォーマルアセスメントには、

立場の違う人でも、同じものさしで支援を考えることができる

客観的なデータが取れる

といったメリットがあります。

一方で、本人の力全てを数値化できるわけではない

という注意点もあります。

次にインフォーマルアセスメントです。

インフォーマルアセスメントとは

家庭や学校での様子の行動観察です。

手に入る情報量が多い、というメリットがありますが、

  • 評価が主観的
  • 共通理解が難しい

といったデメリットもらいます。ですので、

数値での記録を心がける、ということが大事になります。

例としては、以下のような点について記録すると良いでしょう。

  • 日常生活のスキルや反応
  • 学習場面の様子
  • 運動場面の様子
  • 面談の様子
  • 発達段階や認知能力について
  • 情緒の様子や不安の強さ、ストレス反応について
  • 異性への反応、性的興味など

これらのアセスメントをもとに、状況の整理をします。

「不適応行動の理由がわからない」という場合には

時間、場所、人物について整理して考えます。

ですので、不適応行動の状況に

時間が関わっているのか、場所なのか、人物なのか、それ以外なのか

について考えると、その原因が探りやすくなります。

応用行動分析による対応

応用行動分析の基本については先ほどと同様の記事で紹介させていただきました。

今回はケースを例示し、

応用行動分析についてもう少し詳しくご説明したいと思います。

ケース「自分でご飯を食べようとしない」

< 状況 >

  • ご飯を自分で食べようとせず、食べさせてもらっている
  • 「食事は食べさせてもらうもの」という認識がありそう
  • 手の機能に問題はない
  • 配膳されたものを触ることはできる
    • 触ったものを「食べさせて」と手渡してくる
  • お腹が減るまで待っても、食べずに泣く、という行動をとる

この場合のA(原因)、B(行動)、C(結果)として

考えられるのは2パターンかと思われます。

< 1 要求行動の場合 >

食べさせてもらいたい(A)→手渡しする、泣く(B)→食べさせてもらう(C)

この流れの場合はAとCへのアプローチが考えられます。

Aへのアプローチは以下です。

  • 最初に自分で食べる見通しをつくよう、視覚支援をする

   →自分で食べられたら褒める

Cへのアプローチは以下です。

  • (ベストな対応ではないが、)要求は認めずに無視する
  • 本人の気持ちを高揚させるものを提供して気を紛らわす

< 回避行動の場合 >

このケースで回避したいA(原因)があるとする場合、

そのAがまだ明らかになっていません。

そのため、このケースの場合はまず

アセスメントを続け、Aを特定することが必要となります。

その後、Aを取り除く、もしくはAへの適切な対応を教える

という対応になるかと思います。

応用行動分析のさらなる応用

応用行動分析をさらに応用し、

そもそも「指示に従う姿勢をつくる」

という支援方法も考えられています。

それは以下のようなものです。

ステップ1:その子にあった強化システムを定める

ここでいう「強化」とは、「行動を強める要素、もの」のことです。

その子にとって価値があり、それのためならその子がやる気になる、

というアイテム、もしくは状況を

アセスメントにより探ります。

ステップ2:指示課題リストを作る

アセスメントにより、その子どもが指示に従わない典型的なケースを

リストアップします。

リストはその子どもが比較的簡単にできるものから

徐々に難しくなるように並べます。

また、リストの初めは子どもが進んでやりたがある課題を1、2個用意しておきます。

最後にほとんど指示に従うことがない課題をもってくるようにします。

(1つの課題に注目し、それをスモールステップにしてリストを作っても良いです)

ステップ3:準備をする

※このステップから先は必ず子どもがリラックスしているときに行います。

課題の流れを説明します。

ステップ4:リストの最初の項目に取り組み、子どもを引き込む

子どもに対し、リストを一つずつやり終えたら

その都度、「ごほうびリスト(ステップ1で定めたもの)」から何かもらえることを伝えます。

最初の項目を子どもがやり終えたら、ごほうびを与えて行動の強化を図ります。

ステップ5:課題リストの残りの課題に徐々に取り組ませる

かんしゃく、パニックの対応について

支援をしていく中で、子どもが

かんしゃくを起こしたりパニックになったりすることはおそらくあるでしょう。

そういった際の対応例は以下のようになります。

  • 安全を確保した上で、感覚刺激を減らすなどし、おさまるまで待つ
  • マイナス言葉を教え、感情を言葉で表せるようにする
  • 大人が気持ちの切り替えモデルを普段から見せておく
  • パニックの気配があった際に早めに、外を見せたり庭に出るなどして落ち着かせる

もちろん一例に過ぎず、絶対上手くいく、と保証するものではありませんが

ご参考になれば、と思います。

脳科学の観点からの対応

少し変わったアプローチとして、脳科学からの考え方があります。

ASDを含む私たち発達障害者には

他者の思考、感情の理解

ということが脳の機能上難しい、苦手であるということが分かっているそうです。

そこへの対応はこの記事の中で触れています。

また、脳科学の観点から親から子にできることについて

こちらの記事で紹介しています。

こちらも参考にしていただけたら、と思います。

まとめ

  • ASDはその特性から周囲と調和しづらい行動をとりやすい傾向がある。
  • 行動の調整のためには応用行動分析の考え方が使いやすい。
  • 応用行動分析を行うのにあたり、原因についてのアセスメントが重要になる。
  • 応用行動分析について、さらに発展した「課題リスト」等を使う方法も検討の余地がある。
  • 気長な対応にはなるが、脳科学の観点から日頃の行動を支援につなげる方法もある。

ASD児など、発達障害の育児は困難の連続かと思います。

ぜひ、この記事が少しでもその助けになれば、と願います。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

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