学校は不登校にどう動く?現実と理想

不登校について

学校は不登校に対して支援してくれるの?どんな支援を求めるべきなの?こういった疑問を持っている方、いらっしゃいますでしょうか?学校の中身というのは一般の方からすれば未知のものなので、そう思われるのもご最もかと思います。では、今回は、私の教員としての経験、さらに認知行動療法も踏まえてその疑問を解決できるようなお話をさせていただきたいと思います。

今回参考にしたのはこの本です。

現在の主な学校の不登校対応

学校が行う対応についてはこちらの記事こちらの記事の中でお話ししています。まとめると

担任の
支援

養護教諭、生徒指導主事、
特別支援教育コーディネーター
と連携

スクールカウンセラー等の他職種の専門家、
外部組織との連携

この3つの手順で支援を行い、それぞれの段階での支援について、管理職(副校長、校長)の指示を確認して動いていきます。ただし、以下の理由で学校としてリーダーシップの取りにくさを感じながらの動きになります。

  • 学校は家庭の中に入り込む権限はない
  • 家庭訪問に割ける時間は限定的
  • 学校教育はどうしても教育の場が学校中心に作られており、家庭への支援が想定されていない
  • 学校が連携できる外部機関も、「要請があれば動く」というスタンスなので、保護者の発信が必要

学校の不登校対応の理想

まず、大前提として、不登校に6つの段階を踏まえておく必要があります。これについてはこちらの記事でご紹介しています。子どもの心のエネルギーに着目し、心のエネルギーが溜まるように見守る、促す、というスタンスを理解しておきます。その上で大事なのは初期対応です。認知行動療法の観点から見ると、「学校を休み始めて3、4日」で体の変容が起きると考えられています。ですので、この期間を踏まえて早急な対応をする必要があります。

不登校の理想的な初期対応(最初の3日間)

学級担任にこだわらず、学校内における「良い関係のスタッフ」がすぐにコンタクトを取るようにします。また、できれば3日目には家庭訪問ができると良いでしょう。注意点としては、何度も紹介していますが、文科省の調査においては、不登校児童生徒が「最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として、全体の3割近くが「先生のこと」をあげています。ですので、担任がコンタクトを取るべき、という従来の意識を学校側は取り払うべきなのです。

不登校の理想的な初期対応(1ヶ月程度の不登校)

家庭での理想的な支援についてはこちらの記事でお話をしてきました。今回は、学校側の支援に着目してお話ししていきます。まずは、早い時期で「教育相談部会」を行い、作戦会議を行うということです。学校の不登校対応において、まず基本になるのが担任の動き、次に教育相談部会ですが、この教育相談部会をできるだけ早い時期に行うことが重要になります。できるならば、これを2週間に1回程度、内容もただの情報交換会ではなく、収集した情報に基づいた作戦会議になるように意識して行います。その際、会議に保護者も様々な形を検討しつつ参加してもらえると良いでしょう。

プチ不登校の提案をする

子どもが1週間以上の不登校にいなった時点で、「プチ不登校」を提案するのも良いでしょう。

  • 週に1回休みながら通う
  • 午後から通う

といった部分登校のプランを一緒に本人と話し合います。「行くか行かないか」ではなく、「無理なく行ける範囲で行こう」という現実的な提案が必要です。認知行動療法の行動活性化の考え方においては、動けない体になっていくことを防ぐことが重要です。無理なくできることを探す作戦会議をします。

家庭訪問でのオススメの提案

家庭訪問の際には以下のような提案をすると良いでしょう。

  • 登校は行けるところまででOK。校門でも、近くのコンビニでも。
  • 準備もなくていい。忘れ物があってもOK。服装も自由。
  • 学校に着けば、教室まで行かなくても登校したことにする。

などなど。再登校について、強引に引っ張るのではなく、「軽く心をゆすってみる」程度にすることが大事かと思われます。

初期対応で注意すること

「学校なんかに行かなくてもいい」と早い段階で決め打ちするのも良くないですが、まだ元気そうだからと言って無理に登校を促すこともよくありません。初期対応では、その子自身の気持ちを「そのまま受け止める」ことが大切になります。

不登校の中期対応(数ヶ月不登校が続いた場合)

ここでの対応はとても難しさがあります。専門家の意見も分かれるほどです。個人的には、ベースとしては6つの段階の中でどの段階に今子どもがいるかを見極め、それに応じた対応をする、ということが重要かと思います。次にもし可能であれば、認知行動療法の行動活性化の考え方がと入り入れられると良いでしょう。行動活性化の考え方においては、「体が動けない体に変容することを防ぐ」ということが主題になります。ですので、子どもの発言、状態に慎重に対応しながら、可能ならば外出行動を少しでも増やし、生活リズムの乱れも防いでいくことが大事です。

スモールステップで登校を促す

子どもの状態を見極めながら、可能なようであれば登校を促します。ただし、あくまでもスモールステップです。「行事なら参加できる」という子には、まず行事に出席できるように促しましょう。そういったきっかけができたなら、そこから週何回かの別室登校など、少しずつ生活空間を学校に近づけ、広げていけると良いです。

不登校が長期化した時の対応

学校は不登校が長期化すればするほど、主体的に行える支援が難しくなっていきます。ですが、「行事予定表だけは渡す」これは行った方が良いです。行事予定表を家庭に渡すだけなら本人へのプレッシャーにはなりません。一方、行事予定を渡すことすらしなくなると、「もう先生はうちの子は学校に来ないと思っている…」と想像し、絶望的な気持ちになってしまいます。他にも「万が一子どもが勇気を出して学校に行ったとして、(行事予定表がないと)行ってみたら校外学習、なんてこともある。そんなことになったら2度と学校に行ってくれなくなる」と思われることおあるでしょう。長期化し、学校が支援に苦慮していても、行事予定表を渡すくらいのことは必ず継続するべきです。

学校復帰よりも「人間関係復帰」を目指す

行動活性化の考え方でいくと、不登校が長期化している場合は「登校行動」よりもまず「社会的活動」や「人との交流」の活性化を目指します。活動の範囲が家庭の、より狭い範囲になってしまうことを防ぎ、家の外に出れるような体を持続できることを狙うのです。ですので、学校としては保護者と連携し、学校以外の、適応指導教室や習い事といった人と接することのできる場に子どもが顔を出せるように支援をしていく必要があります。

チーム学校として対応する

「チーム学校」について、現場は勘違いしていることが多いです。「チーム学校」=「複数で対応すること」と思っている教員が多いのですが、「チーム学校」には厳密な定義があります。生徒指導提要において、以下のように定義されています。

学校内のスタッフ =「事務職員、指導教諭、教諭、養護教諭、SC、SSW」

※SCはスクールカウンセラー、SSWはスクールソーシャルワーカーの略

スタッフの指揮系統=「校長、副校長、教頭、事務長、主幹教諭」

ここで勘違いされがちなのが、SC、SSWが学校内のスタッフではなく、学校外の連携すべき関係者として考えられてしまうことです。SC、SSWも学校内のスタッフなので、積極的に会議にも参加してもらい、より密に連携して不登校対応を行うべきなのです。特にその両者は心理、福祉の専門家です。不登校になってしまった子どもを心理的に支えたり、外部機関と繋いだりする際に大変大きな力になります。特に、スクールカウンセラーが不登校支援についてより力を発揮できる可能性についてこちらの記事でもお伝えしています。現状よりも積極的な連携をすべきです。

まとめ

  • 学校は不登校に対して、担任→校内連携→校外との連携という対応をとる。
  • 理想的な対応としては、6つの段階を意識しつつ、認知行動療法の考え方も取り入れると良い
  • 認知行動療法の行動活性化の考えを取り入れると、いかに外へ促せるかが大事
  • あくまで支援はスモールステップで。長期化したときは登校よりも人間関係の復帰をまず促す
  • 学校は「チーム学校」を正しく理解し、SCやSWWをより積極的に活用する必要がある

現実と理想に隔たりがあり、学校の対応に対して自浄作用が期待は難しいです…。ですが、なんとか保護者、関係者の意見が届き、学校の対応が理想に近づくことを願います。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

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