ゲーム依存、対応すべきなのか?

不登校について

ゲームを手放さなくて困る、ゲームに夢中でその他のことに手がつかない、お子様の様子についてこのようにお困りの方、いらっしゃるのではないでしょうか。私自身、子どもが一日中パソコンに向かっていることも多く、心配はつきません。そこで今回は、ゲーム依存をその対応について考えていきたいと思います。今回の記事を読めば、

  • ゲーム依存は依存してしまう理由を探るのが大事
  • そもそも多くのケースはゲーム依存に当てはまらない
  • ゲーム依存への最大の対応方法は環境の改善
  • 親自身のケアも必要

といったことがわかります。

今回参考にしたのはこの本です。

ゲーム依存に対応できなくても良いが、できたらベスト

以前の投稿で、不登校のお子さんのゲーム依存については、あまり積極的に解決に動く姿勢はオススメしていませんでした。「子どもの心のエネルギーを貯める」という観点から、なるべく子どもにとって心地よく過ごすのが良いと考えていたからです。ただ、この選択肢はベターではありますがベストではありません。認知行動療法の、「行動活性化」の考え方で言うと、「身体がゲームをできる場所でしか過ごせないように変容してしまう」からです(ゲームをしている元気は確保できる、という考え方もできますが)。ですので、ゲームに依存しなくても良い身体である、ということを目指せるということは、とても良いことなのです。

ゲーム依存の対応の前に、その背景を考えることが大事

まず知るべきこととして、依存する時にはその理由がある、ということです。依存のきっかけとしては「苦痛を忘れ、癒される」ということが多いです。理由もなく依存状態に陥る人はいないと言われています。つまり、依存状態というのは二次的な障害で、そもそも一次的な障害がまずあることが問題なのです。一次的な障害としてあげられるのは、いじめや発達障害、その他思春期の葛藤や親への反抗心など、本人の感じている生きづらさが考えられます

こういった背景に目を向けずに対応すると、ゲームを取り上げるといった行動をしてしまいそうですが、取り上げると苦痛に耐えるためのツールがなくなってしまい、依存はひどくなります。また、親子で対立するきっかけとなり、ひどい時には暴力に発展するかもしれません。そういったことを避けるためにも、まず依存の背景を考え、その上で対応する必要があります。

依存するゲームの種類も依存背景を探るヒントになる

依存している子どもにとってゲームは心的苦痛を和らげる手段です。そのため、ゲームの内容からある程度子どもの抱える問題を察知することができます。

  • アクションゲーム→自信を失っており、興奮や自信を獲得したいと考えている
  • アバターを使ったゲーム→周囲に理解されず、無価値に苛まれている
  • 動画などのコンテンツ連続再生→過去の苦しみから逃れるなど、リラックスしたいと考えている

ゲーム依存の定義は決まっている

まずここを確認しましょう。ゲーム依存というのは主観的な判断ではなく、医学的な定義がきちんとあるんです。

ゲーム依存については「ゲーム症」という診断名がある

2019年に、国際疾病分類において、「ゲーム症」が認定されました。基準は以下です。

  1. ゲームを始める時間ややめる時間等を自分ではコントロールできない
  2. 日常生活でやるべきことより、ゲームが優先されてしまう
  3. 家庭や学校などに悪影響が出ていてもゲームをやめられない
  4. 1から3の状態が少なくとも12ヶ月以上続いている

この基準に当てはまらなければ、厳密にはゲーム依存ではありません。もし当てはまらないのであれば、比較的おおらかな対応をしても良いかと思います。

ゲーム依存にまつわる話、「脳が壊れる」は本当?

ゲーム依存に限らず、あらゆる「依存症」において、依存状態が続くと「脳の前頭葉の機能が低下する」「神経細胞が壊れる」などの研究結果が出ています。しかし、10代の子どもの多くはそこまで進まず、薬物治療の必要もなく改善するケースがほとんどです。また、脳の壊れる程度についても、ゲーム依存のによる変化より、両親の不仲や暴言、暴力による影響の方が大きいとされているくらいなので、脳への影響はさほど心配しなくても良いでしょう。

ゲーム依存への最大の対応方法は環境の改善

最大の対応法としては、環境の改善です。依存に関しては「ラットパーク実験」というものがあり、動物に依存物質を与えた上で環境だけ区別しておくと、環境設定の良い動物は依存症をほとんど発症せず、環境設定の悪い動物のほとんどは依存症を発症した、という結果が出ています。つまり、依存症の原因は依存させるものではなく、生活している環境にあると考えられるということなのです。

環境設定で重要すべきは「対立」するのではなく、「応援し、寄り添う」という姿勢です。海外では、「依存の反対はつながり」という主張がされています。その元となるのは、ポルトガルでの依存症治療例です。ポルトガルでは、依存症を社会全体で受け入れる政策に切り替えた結果、依存症患者が激減しました。孤立は依存を生むと言われています。孤立を防ぐことで、依存症患者の激減に成功したのです。

無理にやめさせず、ゲーム以外の依存先を見つける

ゲームはあくまで苦痛から逃れるための「心の杖」です。ですので、取り上げるのではなく杖を増やして一つに依存しない状況を作る、ということが良いと思います。この場合の新しい依存先の条件は以下の3つです。

  1. プレッシャーが少なく、受容的で暖かい環境
  2. 楽しい
  3. 人に認められる

ゲームにハマる前に好きだったことを思い出し、依存先の候補にするのも良いでしょう。具体的には以下のようなものがオススメです。

  • ペットの世話
  • (多少の危険が伴う)スポーツ
  • 趣味の仲間を見つける
  • 大きな音を出す、声を出す(カラオケや楽器演奏など)
  • アルバイトをする(禁止されている場合は親族のお手伝いなど)

良いところを徹底的に褒め、伸ばす

依存に向かう大きな原因は「孤立」ですので、ありのままの子どもを見てあげた上で評価し、子どもの居場所を家庭内に改めて作ってあげましょう。特に発達障害のある子のケースにおいては、能力の凹凸の影響で自信を無くしてしまっていることが多いです。得意なことを徹底的に褒めて伸ばしてあげましょう。こういったやり方の技法として、依存症の根底にある「つながりの喪失」を回復するためのものとして「CRAFT」という手法が効果的です。以下の4つの考え方を柱にし、会話をできるだけプラスのイメージの言葉に変えましょう。

  1. 相手をコントロールしない
  2. 親自身が変われることから始める
  3. 正論は反発、悪化を呼ぶので一旦飲み込む
  4. 言い換え、ポジティブコミュニケーションを心がける

あえてネットを使い、親も趣味探しを手伝う

ゲーム依存の場合、ネットゲームに依存しているケースも多いですが、ここであえて親も一緒にネットを使い、敵ではないことを示すのも良いでしょう。子どもがネットを駆使してさまざまな情報を取り出すのを眺めながら「すごいね」などと褒めてあげられたら最高です。なお、趣味探しにおいてコミュニティに属すことを検討する場合には、同世代のいないコミュニティがオススメです。同級生とのトラブルを抱えていた場合に、その再燃を避けることができますし、学校以外の世界に視野が広がる可能性もあります。あくまで本人がペースを決め、リラックスした状態で参加できるようにしましょう。

ゲーム依存症の対応での注意点

ゲーム依存で身体に影響が出ることあるが、それでも取り上げない

ゲーム依存の結果、頭痛や手足の変形、エコノミークラス症候群等の症状が現れることがあります。それでも、無理やりゲームから引き離す方がリスクは高いです。暴力や、最悪のケースを招く危険性があります。身体に影響が出るほど依存している場合、まず「この子はそれほどゲームを必要としていたんだ」ということを理解してあげる必要があります。ただ、もちろん放置ではいけません。精神保健福祉センターに相談し、指示を仰ぐのも良いでしょう。福祉や医療の手を借りていく、ということが大事になっていきます。

親自身の孤立にも注意

子どものゲーム依存は、本人の孤立だけでなくそれを支援する家庭が周囲から孤立する、というリスクがあります。ゲーム依存の対応に苦慮する場合には、自分たちだけで抱え込まず、福祉や医療など、周囲に支援を求めることも考えておきましょう。ゲーム依存の相談先としては、「精神保健福祉センター」「保健所」「子ども家庭総合支援拠点(子ども家庭支援センター)」「依存症の専門医」などがあります。ぜひ活用していきましょう。

親自身の頑張りを認め、自身の生活を豊かにする

ゲーム依存の対応においては親側の余裕が大事です。親が肯定的な気持ちになって家庭の雰囲気が和むと、子どもの心にも変化が生じてきます。ぜひ、親御さんの心身が喜ぶことを率先して行いましょう。

  • 一人でリラックスする時間を持つ
  • 友達とおしゃべりする
  • 自分が心落ち着くことをする
  • 美味しい食事をとる
  • 美容室に行く
  • エステやマッサージに行く
  • コスメやバッグ、洋服を買う
  • 習い事を始める

などなど。やれることがあればやってみましょう。

依存について相談できる先を増やす

ゲーム依存の専門の医療機関では、親のカウンセリングや家族教室を行なっているところもあります。カウンセリングを受ける、家族教室に参加する、といった形で相談先を増やすことも考えてみると良いでしょう。

ゴールは、子どもの孤立感が和らぎ、幸せを感じられるようになること

最終的に「ゲームをやめさせよう」とか、不登校のケースの場合に「不登校をやめさせよう」とするのはやめた方が良いです。子どもの孤立感が和らぎ、幸せを感じられるようになれば、それが回復です。心地よい状態を維持できるようになれば、子どもは自然にゲームから離れます。

万が一暴力に発展したらすぐに警察へ

ゲーム依存の対応が暴力に発展してしまった場合にはすぐに警察を頼りましょう。生活安全課の警官がしっかり対応してくれるハズです。あくまで「警察を呼ぶのはあなたを守るため」という子どもへの姿勢はもっておきましょう。また、実際には子どもが暴力を振るうのではなく、その前に親が暴力を振るっているケースが多いとも言われています。思い詰めず、冷静な対応を心がけましょう。ちなみに以下の行為は全て暴力行為に相当します。このようなシーンが日常的に見られたら、自分たちでなんとかしようとせず、第三者に相談しましょう。

  • 押しのける、手で払う
  • 怒鳴る、バカにする
  • 物を投げる、破壊する
  • 大きな音を立てる
  • 叩く、ける

まとめ

  • ゲームは子どもにとっての「心の杖」だったりする。杖を必要としている理由が大事。
  • そもそもゲーム依存に該当するケースは少ない。脳の変化も、噂ほどではない。
  • 最大の対応方法は環境の改善。環境が良くなれば自然に依存はなくなる。
  • 依存先が多くなれば依存の強さが弱まり、問題はなくなる。
  • 親自身のケアも大事。頑張りを認め、生活を豊かに。
  • 暴力に該当する事態においてはすぐに警察の生活安全課へ

ゲーム依存は認知行動療法の観点からはとても心配な現象ではあります。ですが、それを一つのサインとして捉えて適切に対応していけば、家族の関係、環境はより良いものになるでしょう。ぜひ、親御さん自身のケアも意識しつつ、適切に対応していきましょう。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

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