発達障害は治るの?
こんな質問を、仕事中にされたことがありました。
結論から言うと治りません。
発達障害は生まれ持った脳の特性であり、
発生する仕組み等もまだ解明されていない部分が多いからです。
ですが、治りはしませんが治療方法自体はあります。
今回は
- 発達障害の治療方法は主に心理療法、家族療法、薬物療法。
- 特に心理療法の中で扱うWISCが読み解けると効果が大きい。
といったことについてお話ししたいと思います。
今回参考にしたのはこれらの本です。
発達障害を「治療する」とは?
発達障害の特徴はずっと続くので、治療によって
障害がなくなる
ということはありません。
ですが、正しい理解と適切な対応で治療の効果は見込めるのです。
心理療法とは
心理療法とは、発達障害の治療に精通した
臨床心理士などのカウンセリングを受ける
といった治療方法です。
様々な検査(後に述べるWISCなど)を通して、
対象者の発達障害者としての特徴を明らかにし、
その対処や対策を知る、というものです。
家族療法とは
家族療法とは、
家族一緒に利用に取り組んで、家庭での接し方についても検討してもらう治療方法です。
家族のように身近な存在が特徴を理解し、受け入れて、必要な対応をすることができれば
発達障害者の状態は大きく安定することが多いです。
一方、両親や兄妹など、家族も発達障害をもっていたり
その傾向があったりすることがよくあることです。
そのため、家族関係が複雑で治療がうまくいかないこともあります。
薬物療法とは
私には一番効果のあった治療方法です。
ASDには有効な薬物がまだ見つかっていませんが、
ADHDにはコンサータ、ストラテラなどといった薬物が有効とされています。
また、緊張や不安といった症状を和らげるために抗不安薬や抗精神薬を処方されることもあります。
私自身、現在ストラテラと抗不安薬を処方されています。
効果は絶大で、
衝動的にしゃべりすぎる、衝動的に発言する、無意味に不安になる
といった症状が緩和されました。
一方、薬物療法には副作用もあるためメリット、デメリットがあり、
この治療法が行われるのは症状が強かったり、心理療法で十分な効果が得られないときのみです。
この治療法に取り組む際は、しっかりかかりつけ医やカウンセラーに相談しましょう。
WISCとは
WISCというのは、臨床心理学の世界で多く用いられる知能検査
のことで、
知能という脳の力をさまざまな観点から分析し、
その観点別の力を測ろうとするものです。
知的障害や発達障害の診断を受ける際には必須の検査です。
WISCの使い方
WISCでは、知能をとても多くの項目に細分化し、
それを役割ごとに再構築することで、
人それぞれ、どういった能力がどの程度あり、どの程度の差があるのか
を明らかにします。
ですので、WISCの結果を分析することで、
その人の得意とすること、苦手とすることが分かるというわけです。
WISCの分析
WISCの分析は、WISCの結果を見るだけでは私たち一般人には分かりません。
心理カウンセラーのような方々が専門知識を使って分析することで、
ようやくその内容を正しく分析できます。
ですので、分析結果については「所見」という形で私たち被験者には伝えられます。
この所見を正しく読み解くだけで、
私たちは自分の強み、弱さ、といった特性について知ることができるのです。
ただ、ある程度を数値から読み解くことはできます。
そのヒントになるのが先ほど紹介したこの本です。
ですが、この本はいわゆる専門書なので、
読むのがめちゃくちゃ難しい…!!
また、WISCは現在Ⅴ(ファイブ)まで行われており、
私が確認したところ、ここまで詳しく書かれたものとしては、
このⅣ(フォー)のものが最新版ではありますが、厳密には最新の情報ではありません。
最新版のⅤについて興味がある方はこちらの本を読まれると良いでしょう。
簡単にですが、WISCーⅣの数値から読み取れる、
ざっくりとした知識についてお伝えしたいと思います。
WISCの項目について
WISCの項目は現在、
FSIQ、VCI、PRI、WMI、PSI、VSI
の5項目が、主に点数が被験者にも明らかになる項目です。
どれがどういう役割か、については難しいのでまた後日お話ししようかと思います。
今回知っておいて欲しいのは、
- FSIQの意味
- それぞれの項目の点数差に注目する必要がある
ということです。
FSIQとは、全体的な知能の程度のこと
FSIQは全体的な知的能力の発達水準を表します。
いわゆるIQと言われるのはこの数値です。
これが120以上=知能が高い、80〜119=平均の範囲内となります。
ですが、85以下ですと、いわゆる「グレーゾーン」となることが多いです。
また、69以下だと知的障害という診断をされることが多いですが、
私の知っている知的障害者が対象の特別支援学校には
FSIQが高い子で89、という子もいたので
69以上のFSIQ=知的障害ではない、とは断言できないのが現状かと思います。
それぞれの項目の点数差の意味
一般的に、WISCを受けた方はFSIQだけを見て判断をしがちです。
ですが、重要なのは実はそれ以外の部分だったりします。
それは、それぞれの項目の点数差です。
VCIやPRIなど、各項目の点数は、定型発達の方は点数の差が大きくなりにくいです。
これに対して、特に発達障害の方に多いのが
点数が有意(医学的に意味があると判断できるほど)に差が大きい
という状態です。
点数の差が大きい=発達障害ではないのですが、
臨床のデータ上、「ADHDに現れやすい点数の差のパターン」
「ASDに現れやすい点数の差のパターン」はあります。
また、先ほど紹介した本でも
「VCIやPRIといった項目の点数差が23点以上の場合、FSIQだけでは知能は判断できない」
と書いてあります。
私の仕事での経験上でも
項目(FSIQは除く)の点数の差が大きい子は抱えている困り感も大きい
というのが実感としてあります。
ですので、FSIQ以外の項目での点数差が大きい場合については
検査を担当したカウンセラーの方に詳しく説明を求めた方が、
より良い支援につながるかと思います。
まとめ
- 発達障害は治らないが、治療によって特性への対応がスムーズになることがある。
- 治療法は、心理療法がメイン。薬物療法も効果的だが要相談。
- WISCの結果については所見を読むことが重要。項目間での点数差にも注意。
WISCの項目間の点数差については、実は支援者もまだまだ理解不足なことが多いです。
このことを私たち自身が知っておくことはとても重要で、
より良い支援を受けることにつながっていくと思います。
ぜひ、今回の治療の流れやポイントを覚えて、より良い暮らしにつなげていきましょう。
今日も、お読みいただきありがとうございました。
コメント