発達障害者の転職、再就職

発達障害について

発達障害の方のお金の課題としてお金を稼ぎ続けるということがあるかと思います。様々な特性から、同じ会社で働き続けることができなくなる、こういうことはあるあるだと思います。そして転職、再就職する際に壁にぶつかって稼ぎ続けることが難しくなってしまう、これもよくあることかと思われます。そこで今回は、

  • 発達障害の方の転職、再就職のポイント
  • 発達障害の方が転職、再就職を乗り越える方法

についてお話ししたいと思います。

今回参考にした本はこちらです。

なお、発達障害者の場合、一般雇用障害者雇用が選べますが、今回は一般雇用と障害者雇用で共通した流れやポイントについて話していきたいと思います。

転職、再就職の流れ

就職活動全体の流れは次のようになります。

  1. 事前準備
    • 自己分析
    • 業界分析、職種研究、企業研究
    • 筆記試験、面接対策
  2. 応募、選考
    • 説明会への参加、企業エントリー
    • 選考(筆記試験、面接など)
    • 内定
    • 入社までの準備

ざっくりいうとこんな感じです。

スケジュールの管理方法は?

コツは4つです。

  1. 重要度の高いスケジュールから予定を組む
  2. 逆算して、準備内容と準備にかかる日数を見積もる
  3. スケジュールに予備日を入れておく
  4. 手帳やアプリを活用する

予備日を入れる重要性

発達障害の特性上期間を予想する、急な変更に対応する、締め切りを守る、こういったことはかなり苦手です。さらに一方で、予定を詰め込がちという特性もあります。これらに対応するために、必ず予備日を入れるということが必要になります。

手帳やアプリの必要性

私たち発達障害者にとって、「明日の自分を信じる」ということはかなりリスクが高いです。また、物事の習慣化も苦手です。この2点から、道具を使って記録や習慣化の手助けをするということが重要になってくるわけです。ちなみにADHDの方には1冊で全てをまとめて管理できる、システム手帳がオススメです。

逆に、ASDの方にはメモ帳とスケジュール帳、それぞれ別にして管理することをオススメします。

就職活動にはお金がかかる

  • スーツ、バッグ、靴など
  • 交通費

こういった物にお金がかかります。そのことも頭に入れて、就職活動に臨みましょう。すでに仕事を辞めている場合については失業給付をもらう、というのも重要です。

失業保険のもらい方

  1. ハローワークへ行く
  2. 求職申込をする
  3. 受給説明会を受けて、失業認定日が決まる
  4. 求職活動をしつつ、失業の認定を受ける

自己分析

自己分析をするコツは2つです。

  1. 自分の強みを知ろう
  2. 発達特性を知って、苦手との付き合い方を知ろう

自分の強みを知る

自分の強みを知る手順は3ステップです。

ステップ1 過去の経験を思い返してみる

ステップ2 経験に対して、とった行動を思い返してみる

ステップ3 行動に対してはっきした力、身につけた力を思い返してみる

(例) 前職での仕事を思い返す

   ↓

   会計担当を任された

   ↓

   粘り強く、注意深く取り組むことができた

この3ステップで強みが見つからない場合は、

  • 新たに経験を積む
  • 家族、友人等に客観的な意見をもらう
  • 苦手を得意に置き換えてみる

などして対応しましょう。

発達特性由来の苦手を知る

発達障害の特性と、それを理由に向かない職業については以下の通りです。

< ADHD >

  • 緻密(ちみつ)性が求められると難しい
  • ケアレスミスが多い

  →法務・経理関係、マネジメント関連業務が×

< ASD >

  • コミュニケーションが苦手
  • 臨機応変な対応が苦手

  →営業、接客業務が×

業界分析、職業研究、企業研究

転職、再就職において、業種や職種、企業をしっかり検討することは当たり前ですよね。では、どのように検討すべきか。まず業種、職種を考えるポイントは以下の4つです。

  1. 今、その業界や職種ではどのような仕事が行われているか
  2. どのようなスキルや経験が必要とされているか
  3. 求人数は多いのか、少ないのか
  4. 将来性はあるのか

次に、働きたい企業や組織を見つけるポイントは以下の3つです。

  1. 関心のある企業や組織から考える
  2. 業種や職種から考える
    • 自分が仕事をするイメージがもてるか
    • 自分の強みや得意と合うか
  3. 働く人から考える
    • 近い価値観の人がいるか
    • 考え方や取り組みに共感できるか
    • 働く人たちの雰囲気が自分に合うか

こういった点にポイントをしぼって考えていきましょう。

身だしなみとマナーについて

まず、身だしなみとマナーについて知ることが大事です。身だしなみを整えるのにあたっては、スーツやYシャツ、ネクタイ、小物が必要になります。これらを事前に用意しておきましょう。スーツやYシャツ、ネクタイについては、お店に行って店員さんと相談するのが間違いがなくて良いでしょう。

小物類の準備

まずはカバンです。

  • A4サイズが入る大きさ
  • 色は黒
  • 派手でないもの

が良いでしょう。

次に筆記用具です。多色ボールペンがあると便利です。

次はメモ帳です。A7サイズ程度が良いでしょう。

次は印鑑と印鑑ケースです。朱肉付きの物が良いと思われます。

ハンカチも必要です。ポケットに入れても型くずれしないサイズが良いです。

最後は腕時計です。派手でないものが良いでしょう。

清潔感ある身だしなみのポイント

基本的なことだけ紹介しますが、ポイントは以下の通りです。

  • 寝ぐせ、ふけのないようにする
  • 朝必ず、洗顔、歯磨きをする
  • 爪を切っておく
  • シャツの袖口のボタンをとめる
  • シワのない服を着る
  • 靴をみがいておく
  • 不快な匂いがしないか、チェックしておく

メールのマナー

メールのマナーについては以下の通りです。

  1. 何のメールかわかるように、タイトルは簡潔に
  2. 形式的なあいさつ(拝啓、敬具など)はいらない
  3. 相手の会社と、所属、名前を最初に書く(〜様もつける)
  4. 自分が誰なのか、きちんと名乗る
  5. 内容は簡潔に
  6. 文の最後は「よろしくお願いいたします」といった一文で終わる
  7. メールの最後に署名(以下の内容)を明記
    • 自分の所属
    • 名前
    • 電話番号
    • メールアドレス

また、他にも気をつけるポイントは以下の2点です。

  1. 説明不足にならないように気をつける
  2. 目的や理由、背景を書くようにする

電話のマナー

電話のマナーは次の通りです。

< 電話を開始する時 >

  1. まず「お忙しいところ、失礼いたします。」
  2. 自分の所属、名前を伝える
    • 「○月○日の説明会に参加させていただいた、○○と申します。」
  3. 目的と話をしたい相手の所属と名前を伝える

< 話したい相手が電話に出たら >

  1. 再び自分の所属と名前を名乗る
  2. 要件を確認
    • 「○○について確認させていただきたく、お電話させていただきました。」

< 話したい相手がいなかったら >

  1. 「○○様は何時にお戻りでしょうか。」
  2. いつ頃にかけ直すかを伝える

< 電話を終わる時 >

・お礼を述べて電話を切る

 「お忙しいところ、ありがとうございました。」

 「失礼いたします。」

面接対策

身だしなみやマナーについて学んだら、次は面接の対策です。第一印象は最初の一瞬で決まってしまいます。準備はしっかり行いましょう。

心がまえ

基本的な心構えは次の通りです。

  1. 姿勢を正す
  2. ハキハキ、ゆっくりと話す
  3. 相手の話をしっかり聞く
  4. キョロキョロせず、相手をしっかり見る

他にも、特性上やってしまいがちなミスを防ぐために、面接で聞かれたことに対して、次のことも注意が必要です。

  1. 就職、転職の理由を具体的に伝える
  2. 待遇面(給与等)の話や前職の不満ばかり言わないようにする

面接の基本的な流れ

  1. ドアを3回ノック。
  2. 「どうぞ」と聞こえたのを確認して、「失礼します」と言って入室する。
  3. ドアをていねいに静かに閉める。
  4. ドアを閉め終わった後にその場で相手に向かって礼をする。
  5. 良い姿勢を意識しながらイスの横に立つ。立つときも姿勢に注意。
  6. 面接官の目を見て「○○と申します。本日はよろしくお願いいたします」と言う。
  7. 礼をする。
  8. 「どうぞ、おかけください」と言われてから着席する。
  9. 座るときには「失礼します」と礼を忘れずに。
  10. イスには奥まで座りすぎず、背もたれも使わない。姿勢も正す。
  11. 面接が終わったら「本日はお忙しい中、ありがとうございました」とお礼をして礼をする。
  12. イスの横に立って「失礼いたします」と言ってから礼をする。
  13. ドアまで姿勢よく、ゆっくり歩く。
  14. ドアを開けたら退室。ドアは静かにていねいに閉める。

面接のポイント

特性を踏まえて、注意すべきことは次の通りです。

  • 話しすぎない。
  • 相手の口もとあたりを見るようにする。
  • 少しだけ笑顔を作る。口のはしを上げておくことを意識する。
  • 相手が話している最中には絶対に話をしない。
  • 声の音量に注意。特に、小さくならないように注意。
  • 「…です。」と、必ず言い切るかたちで話す。
  • 姿勢を正す。背中をまっすぐに。
  • 貧乏ゆすりはしない。
  • 質問された時は「とまどっても大丈夫」という気持ちで。
  • 質問には「完ぺきに答えよう」とは思わない。

自己紹介や自己PRなど、具体的な答え方については誰かに見てもらうか、ハローワークのキャリア相談を使って見てもらうか、助けを求めながら進めて行きましょう。

企業エントリーの方法

まず応募方法について考えましょう。それが決まったら、エントリーシートや履歴書を書きましょう。

複数の企業に応募するかどうかを決める

並行して複数の企業に応募するか、それとも1社にしぼって順番に進めていくか、このあたりを考えましょう。複数の企業に応募するメリット、デメリットは以下の通りです。

< メリット >

  • いろいろな条件を会社ごとに比較しながら進められる
  • 就職活動の時間短縮化が図れる

< デメリット >

  • 準備が多くなるため、作業が大変
  • スケジュールが重なった時は優先順位をつけなくてはいけない

メリット、デメリットについて、自身の発達特性を踏まえて考えていきましょう。

応募方法の選び方

企業の応募方法はいくつかあります。

  1. 求人のホームページ
    • リクナビ、マイナビ、タウンワークなど
    • 多くの求人が見れ、条件にこだわる人に向いている
  2. 合同説明会
    • リクナビ等の合同説明会
    • ハローワークの説明会
    • 多くの企業が見たかったり、直接合って判断したい人に向いている
    • 地元企業で探しやすい(公的機関も含む)
  3. 企業のホームページ
    • 行きたい企業が決まっている人に向いている
  4. 就労支援組織
    • 民間の就職エージェント、ハローワークなど
    • 個別で相談したい人、自分に合う企業を紹介してほしいという人に向いている
  5. 自分自身の人脈
    • 知人、家族等の紹介
    • 身近な環境で安心して就職したい人に向いている

エントリーシートの書き方

エントリーシートとは、企業に応募する際に提出を求められることのある、企業ごとの応募書類です。書き方は以下の通りです。

  1. エントリーシートを取得し、内容を確認
    • 記入項目、締切日、提出方法
  2. 内容は各社で似ているため、回答を準備しておく
    • 自己PR
    • 志望動機
    • 取り組んできたこと
    • 性格(長所・短所)
    • キャリアビジョン(数年後の自分の理想像)
    • 成功体験
  3. 書いた内容が質問の意図とズレていないか、見直しをする

履歴書の書き方

まず次の2点を確認します。

  • 企業が指定している履歴書があるか
  • 手書き指定があるかどうか

次に学歴、職歴等をポイントを確認しながら記入します。これについては以下のサイトがとても見やすい例を挙げています。

履歴書の書き方マニュアル完全版! 履歴書の見本(サンプル)・作成方法|履歴書の書き方マニュアル完全版! 履歴書の見本(サンプル)・作成方法
【履歴書テンプレートのダウンロード(Word、Excel、PDF)あり】会いたいと思わせる履歴書の書き方を徹底解説! W...

また、企業で働いたことがある場合は「職務履歴書」の提出が必要なこともあります。これについては以下のサイトを参考になさってください。

【完全版】職務経歴書の書き方マニュアル
転職・求人情報サイトのマイナビ転職「職務経歴書(職歴書)の書き方完全マニュアル」ページ。職務経歴書(職歴書)の書き方のポ...

選考に落ちてしまった場合の振り返り

振り返りのポイントは次の3つです。

  1. 「落ちた」=「能力不足」ではない
  2. 応募した会社が自分に合っていたか、選び方を考え直す
    • 自分の発達特性や強み、経験が評価される業種だったか確認
  3. 自分自身に改善点がないか、しっかり振り返る
    • 応募書類に不備はなかったか
    • 面接での改善点は何か
    • 自己分析や企業分析はきちんとできていたか

様々な支援を受けよう

自分の特性を踏まえ、いろいろな人や機関にサポートしてもらいましょう。まず、やるべきことを、「自分1人でできること」「サポートがあると効果的なこと」に分けましょう。そして、それをもとに実際に支援を受けてみましょう。

サポートを受ける心がまえ

意見をもらう際には、その背景まで聞きましょう。新しい気づきが得られます。また、最終の意思決定は自分で行うという意識はしっかり持っておきましょう。

1人でできることと、サポートしてもらうこと

< 自分1人でできること >

  • 自己分析
  • 企業、業界分析
  • エントリーシートや履歴書の作成
  • スーツや小物の購入
  • セミナーへの出席
  • 振り返りシートの作成
  • 家族や支援機関への相談

< サポートがあると効果的なこと >

  • 自己分析などへの客観的な意見をもらう
  • 作成した書類のチェック
  • 面接練習
  • 身だしなみのチェック
  • うまくいかなかった時の相談

支援してくれる機関

  1. ハローワーク
    • 就職相談
    • 就活セミナー
    • 求人紹介
    • 企業説明会の実施
  2. 都道府県、市区町村の就労支援センター
    • 就活講座
    • 職場実習
    • 職業相談等の実施

気になる支援機関があれば、

問い合わせたり、実際に話を聞きに行ったりしてみましょう。

ハローワークの活用法

ハローワークについては、以下のようにたくさんの活用法があります。

  1. キャリア相談
    • 面接の受け答えなどについて、アドバイスをもらえる
  2. 各種セミナー
    • 各種セミナーに参加できる
    • ハローワークだけでなく、就労支援センターなどのセミナー情報も手に入る
  3. 職業訓練の紹介
    • 必要な訓練カリキュラムの紹介を受けられる
    • 訓練には、PC系、事務系など様々な種類があり、障害者雇用に特化したものもある。
  4. 障害者向け合同面接会
    • 障害者雇用を考えている企業の面接会に参加できる。
    • 障害者雇用を考えている企業が集まるので、その中から興味のある企業に応募できる。

そもそも、できるだけ長く同じ会社で働くためには?

転職、再就職について知るのも大事ですが、そもそもできるだけ長く同じ会社で働くということができるようになることも大事です。

入社前に人間関係や仕事内容を見極めるコツ

入社前に人間関係や仕事内容を見極めるコツが2つあります。

  1. インターンシップに参加すること
  2. 面接で逆質問すること

これらを通して、自分に合う・合わないを見極めるといいでしょう。

自分のことを知ろう

人間関係や仕事内容は、「良い・悪い」ではなく、自分に「合う・合わない」です。そこを見極めるために、自分の分析を行いましょう。何が得意、何が苦手か、しっかり見つめ直しましょう。

まとめ

  • 転職、再就職はエネルギーがいる。時間もお金もかかる。
  • 長い期間、見通しをもって計画的に行動する必要がある。
  • 会社相手には「暗黙の了解」がたくさん。しっかり常識を覚えよう。
  • 特性的に、転職、再就職はハードルがかなり高い。できるだけ手伝ってもらおう。

発達障害者が社会からドロップアウトしてしまうときの原因として、退職しがち、転職活動、再就職でつまづきがち、ということがあるかと思います。支援をしっかり受け、ていねいに活動を進め、稼ぎ続けることを目標にがんばっていきましょう。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

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